ホーム 【超効率&短時間の肉体変革】高強度インターバルトレーニングの魅力に迫る。
【超効率&短時間の肉体変革】高強度インターバルトレーニングの魅力に迫る。
高強度インターバルトレーニング。まだその名を知らない人もいる比較的新しいトレーニング理論です。高い負荷の運動と軽い負荷の運動の組み合わせによって、からだを極限まで追い込み、体脂肪率や筋肉量に優れた影響をあたえるといわれるものです。肉体づくりに欠かせないトレーニングの理論。なかでも高強度インターバルトレーニングは、医学やスポーツ科学の視点から国内外でも多くの研究が進められ、大きな注目を集めています。日本発のタバタ・トレーング(TABATA protocol)は今や世界が認めるトレーニングとして世界中で取り組まれる高強度インターバルトレーニング。そんな魅力溢れるトレーニングを詳しく、より実践的な視点からご紹介します。
強弱を反復する高強度インターバルトレーニング
┃ ざっくり理解する高強度インターバルトレーニング
英語で「Interval(インターバル)」は、間隔や休止時間を意味しています。インターバルトレーニングとは名前の通り休憩を挟みなながら取り組むという運動理論のことです。このトレーニングのイメージは、「走ってー休んでーまた走って」といったイメージでも差し支えありませんが、そこは日進月歩で進化しつづけるトレーニング分野。現在はさらに進化したインターバルトレーニングが考案され、プロ級のトップアアスリートはもちろん、学生や社会人レベルのアスリートやトレーニーにも一目置かれる存在となっています。歴史をさかのぼれば、エミール・ザトペック(Emil Zátopek)という陸上選手が行っていたことに由来します。1948年ロンドンオリンピック10000mで金、1952年ヘルシンキオリンピックでは5000m、10000m、マラソンで金の三冠王に君臨したランナーです。現在ではインターバルトレーニングは強い負荷と軽い負荷の運動の組み合わせ(あるいは短い完全休息)を組み合わせて行われるものです。インターバルトレーニングを一言で表現するならば「強弱をくり返す運動」といえます。最近では運動の強度の高いものを組み合わせておこなうことから高強度インターバルトレーニングといわれたり、英語名High Intensity Interval Trainigの頭文字をとってHITと略してよばれています。海外ではHIITという呼び方が一般的です。インターバルトレーニングは、運動の自由度が高くて決まった運動パターンはありません。どんな動作を組み合わせるかは選手やチームによってさまざま。そんなインターバルトレーニングは、競技パフォーマスの向上、健康のためのフィットネス、ダイエットとさまざまな目的に合わせて世界的に取り組まれているエクササイズのひとつとなっています。
┃ 注目を集める理由は優れた効率性にある
筋トレをはじめトレーニングの分野で「効率」というとき、それは「短い時間のトレーニングで」、「短期間で」、「期待さえる実績が得られる」という3つの要件を満たしていることがポイントになります。それに加えて、安全性に優れているというのも重要といえます。高強度インターバルトレーニングの多くはエクササイズの時間自体は短く、プログラムによっては、5分〜20分程度です。ある程度の効果(心肺機能の改善、体脂肪率の減少、筋肉量の増加など)が得られるまでの期間は多くの研究で報告されている限り4〜8週とされています。筋トレそのもで肉体的な効果が得られるまでに必要な一般的な期間は約12週といわれています。こうしてみると高強度インターバルトレーニングが効率面に優れたトレーニング法であることがみえてきます。ちなみに高強度インターバルトレーニングを科学的なトレーニング法として確立させ、世界的にも認められるトレーニングとなっているものとして、Tabata法とGibala法があります。それぞれ運動時間と休息時間などに違いがありますが、両者ともインターバルトレーニングを発展させたものです。Tabata法は、立命館大学スポーツ健康科学部教授である田畑泉教授が、Gibala法は、カナダのマクマスター大学の運動生理学者であるマーチン・ギバラ( Martin J Gibala)教授によって考案されたインターバルトレーニングです。
世界が認める確かな効果を徹底検証
トレーニングに取り組むうえで、もっとも大切なのは「それが納得トレーニング理論か」ということです。流行しているから、みんなが話題にしているからといった理由だけでは心に火がつきにくいものです。トレーニングは肉体的な作業ですが、メンタル的にも辛いのが事実。モチベーションを維持するためにも科学的に検証されているかどうかは重要なポイントになります。高強度インターバルトレーニングは、運動の方法として一般に広く定着しているには未だ不十分です。そういった意味では未知との遭遇と感じる人も少なくないはず。まずは高強度インターバルトレーニングの秘めるメリット(魅力)について確認しておきます。
┃ 無酸素・有酸素の良いとこ取りで肉体改革に最適
高強度インターバルトレーニングの実績のなか、まず注目されるのは持久力の向上。スタミナの改善です。歴史的にも陸上競技から発展したトレーニング理論だけに走競技における研究は群を抜いて数多く取り組まれています。ただしそれだけではありません。高強度インターバルトレーニングは、強い負荷&軽い負荷のくり返しで構成されています。もっと具体的にいえば、無酸素運動と有酸素運動の要素を組み合わせたトレーニングということになります。無酸素運動の代表的なものといえば、筋トレや短距離走です。短時間で爆発的な筋力を発揮するタイプのトレーニングで、主なエネルギー源は糖分になります。それに対して有酸素運動の代表的なものは長距離のマラソン、ウォーキング、水泳などです。運動強度そのものは無酸素運動に落ちますが持久力を必要とし、主なエネルギー源として脂肪を使う運動です。ダイエットに取り組む人にとってはキーワードともいわれるエクササイズ方法です。くり返しになりますが、高強度インターバルトレーニングは強い負荷&軽い負荷のくり返し。ここには無酸素と有酸素の運動要素が両方とも取り入れられているのです。Tabata法を例にとってみると、無酸素と有酸素の運動要素が混在する高強度インターバルトレーニングにおいて(週3回×6週間の実施)、有酸素運動の能力は約10%の改善、さらに無酸素運動の能力は30%の向上がみられたと報告しています。
┃ 脂肪燃焼の効率を高める!?
高強度インターバルトレーニングを推奨する専門家の1人であるジム・ストッパー博士(Jim Stoppani)。組織・細胞・分子・遺伝学といったレベルから筋肉を研究し、現在はトレーニングコンサルタントとして活躍しています。博士は自信のホームページのなかで「8秒運動×12秒休息」を用いた20分間のインターバルトレーニングによって脂肪燃焼効果を6倍にするという研究論文を紹介しています。
┃ 強度にこだわり過ぎなくてもダイエット効果は期待できる
ダイエット目的に筋トレに取り組む人も多いと思いますが、高強度インターバルトレーニングのダイエット効果はどうなのでしょうか。無酸素運動と有酸素運動の両方を取り入れることは、どちらか一方を行うよりも効果的なダイエットができることがわかっています。高強度インターバルトレーニングは、通常のトレーニングよりも時間が短縮できるうえに、脂肪燃焼効率も高いことが確認されています。それに関連して知っておきたいのが「運動後過剰酸素消費量」というものです。難しい名前ですが、「運動したあともカロリーが消費される」ということを意味しています。「余裕だ」と感じる負荷量の運動をつづけると運動後2時間、「ちょっときつい」〜「きつい」と感じる負荷量の運動であれば運動後4〜12時間はカロリーが消費されるといわれています。
また気になるのは「高強度」という言葉です。強度を強くするということは、運動に慣れている人でないと取り組むことが難しいと感じてしまいます。ですが、マイルドな強度でも効果は期待できます。マイルドとは「やや楽」〜「ちょっときつい」と感じる程度ということです。もちろん高強度に比べると効果がえられるまでの期間は長くなる傾向にありますが、継続することで体脂肪の減少、筋肉の増加といったインターバルトレーニングの効果を得られるとされます。必ずしも高強度である必要はなく、自分のレベルに合わせてはじめることが大切だということです。
実践|HITの重要ポイント
┃ 【ポイント①】目安となる期間&頻度
高強度インターバルトレーニング。実際に取り組むとすれば、どの程度のペースで取り組むのがよいのでしょうか。個人差はあるので、あくまで自分の体力に合わせることがもっとも重要なポイントですが、各研究をまとめると、一般の目安といわれている頻度および期間は以下の通りとなります。
■頻度:1週間に4回程度
■期間:およそ6〜8週間程度
┃ 【ポイント②】メニューの骨格をつくる
運動と休息(もしくは軽い運動)をどの程度の時間で組んでいくか。最初は無理をせずに全体で15分程度のトレーニングから開始し、徐々に全体で20分程度のトレーニングへと発展させるのが推奨されています。トレーニングの骨組みは
強い強度の運動時間
休息(もしくは軽い運動)の時間
1〜2の反復回数(何セットやるか)
これをもとに、体力に合わせて段階的にメニューを進めていきます。
▼ Step1
■強い強度の運動時間:15秒
■休息(もしくは軽い運動)の時間:60秒
■セット数:10セットが目標(体力に合わせて)
▼ Step2
■強い強度の運動時間:30秒
■休息(もしくは軽い運動)の時間:60秒
■セット数:10セットが目標(体力に合わせて)
▼ Step3
■強い強度の運動時間:30秒
■休息(もしくは軽い運動)の時間:30秒
■セット数:11セットが目標(体力に合わせて)
▼ Step4
■強い強度の運動時間:30秒
■休息(もしくは軽い運動)の時間:15秒
■セット数:25セットが目標(体力に合わせて)
体力の進展に合わせて2〜3週を目安にステップアップを目標とします。
┃ 【ポイント③】強度の目安は最大心拍数
高強度インターバルトレーニングの負荷量を設定する指標となるのが「最大心拍数(さいだいしんぱくすう)」です。これは、1分間に心臓が拍動するかという最大回数のことです。運動をすると心臓がドクドクとうごきます。運動がつらければ心臓のうごきはより速くなります。ですが、ある段階まで運動のつよさをあげたとしても、フラット状態になり回数が増えなくなります。心臓の拍動回数には限界があるのです。これが最大心拍数というものです。最大心拍数は体力などの違いから人によって異なります。
▼ 最大心拍数の85〜90%が目標になる
まずは最大心拍数の85〜90%をめざすといいわれています。つまり、「自分の最大心拍数が100回/分であれば、85〜90回/分心臓が拍動するくらいの運動強度にする」ということです。85〜90回/分という最大心拍数は、全力で運動するということに匹敵する強さです。
▼ 自分の最大心拍数はどのくらいか
最大心拍数を簡単な計算式として有名なものは
■220−年齢=最大心拍数
という計算式です。これで最大心拍数を知ることができるということになります。
┃ 無理は禁物|体力に合わせてスタートすること
「220−年齢=最大心拍数」でもとめた最大心拍数の85〜90%といえば、「かなりきつい」と感じるレベルの運動です。すでにご紹介したように「まだ余裕がある」〜「ややきつい」と感じる程度でも効果はあるといわれます。まずは無理をせずに少しずつはじめてみるのが大切です。ちなみに「まだ余裕がある」〜「ややきつい」は最大心拍数の55〜65%くらいに相当します。
インターバルトレーニングに挑戦
┃ まずはHITのイメージをつかむ!
ここでは全体として10分弱の初級用HIT、15〜17分の中強度のインターバルトレーニング、そして上級者用としてハードなテイストをもった高強度インターバルトレーニングの3本をご紹介します。まずは、参考動画をみて実際のインターバルトレーニングがどのようなものかイメージをつかんでおきます。なかなか文字だけではイメージがつきにくいと思いますが、おおよその概要を把握します。インターバルトレーニングに決まった型式はありません。エクササイズの組み合わせは自由です。
VIDEO
┃ 初級編|10分間HIT
初級編として全体で10分弱の高強度インターバルトレーニングをご紹介します。普段運動する習慣がない方でも比較的安全に行うことができる種目から構成されています。インストラクターのうごきに合わせながら取り組んでみましょう。強度のつよい運動は、動画横にあるオレンジ色の番号によって示されています。トータルで高強度種目を10種類こなします。
VIDEO
┃ 中級編|15分間HIT
こちらは中級者レベルにおすすめの高強度インターバルトレーニングです。運動種目自体は初級編と大きく異なることはありません。種目の難易度が難しく取り組みにくいといったことは恐らくないといえます。ですが、時間が長いのでその点が大きく初級編と異なります。動作種目はシンプルですので一度は参考動画を通してみて全体の流れを把握しておくことでスムーズに取り組めます。
VIDEO
┃上級編 |25分間HIT
運動の強度、種目の複雑さともにやや難易度が高くなります。こちらもまずは動画全体のうごきを確認しましょう。同じうごきにみえても腰の位置が高い場所から徐々に低くなるなど、一連の動作のなかにバリエーションが含まれています。時間も25分と長めですので1回動画をみただけでは全部の流れをつかむことが難しいかもしれません。最初はウォーミングアップを兼ねて動画を真似しながら、動作が頭に入ったら本格的に取り組んでみてください。
VIDEO
まとめ
理論を大事にしたいHIT
高強度インターバルトレーニング「HIT」。数あるトレーニング理論のなかでも有酸素系エクササイズと無酸素系エクササイズの要素を取り入れたトレーニング。国内では、一般のトレーニングとして取り組まれているよりも上級アスリートなどに好まれている傾向があります。しかし日本の外に目を向けてみると、高強度インターバルトレーニングは一般の人が気軽に取り組めるエクササイズとして定着しています。今回ご紹介した多くの参考動画もトレーニング先進国であるアメリカのものが多くなっています。しっかり取り組もうと思えば、運動強度はかなり強いものとなりますので決して無理をせずに、自分の体力や運動能力の成長に合わせて実施することが大切です。