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スロートレーニングは半分の努力で効果絶大の筋トレだった!!


スロートレーニングというトレーニング理論をご存知でしょうか。医学・スポーツ科学の発展に追随して常に進化しづづけるトレーニング分野。「加圧トレーニング」、「フィジカルトレーニング」、「インターバルトレーニグ」など次々と新しいトレーニング理論が世に送り出されています。スロートレーニングは原理は決して斬新的なものではありませんが、その効果にはプロのアスリートから医療領域におけるリハビリテーション、さらに予防医学といった視点からも注目を集めています。数々の研究によって明らかにされつつある新・筋トレ論。一般に筋トレにおいて筋肉を成長させ、筋力の増強をはかるには自分のもてる筋力の70%以上の負荷が必要といわれるなか、スロートレーニングにおいては約50%の負荷刺激において筋肉の成長・筋力の増強が可能とされます。「努力は最低限に、効果は最大限に」。そんな効率的な筋トレがあるなら、理想のボディーラインを手に入れたいという意識の高い男性であれば知っておきたい筋トレ方法のひとつだといえます。今回は本当にスロートレーニングが優れているのか、どうしてそんなことが可能なのか。経験や感覚を超え、その科学性を追求しながら魅力を探求し、さらに具体的なスロートレーニングの実戦的メニューについてもご紹介します。

 


http://www.jwcpe.ac.jp/research/bulletin/bulletin_vol20.pdf 日本女子体育大学付属基礎体力研究所紀要 筋発揮張力維持法(スロートレーニング)の効果とそのメカニズム(p32)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-003.html 厚生労働省・e-ヘルスネット スロートレーニングとは

 

スロートレーニングの優れた5つの科学性


1. 筋肉への刺激強度がつよい

 

スロートレーニングは比較的新しいトレーニングの考え方です。ただそれは理論として体系化されたのが新しいということ。トレーニングそのものは至ってシンプルです。極端な表現をすれば、「普段おこなっている筋トレをゆっくりやてみましょう」というもの。難解な人体生理の知識や特殊な専用のトレーニング機器などを必要とするものではありません。スロートレーニングが優れている理由のひとつは、筋肉に与えることができる刺激の強さということができます。一般に筋トレといっているエクササイズの多くは「レジスタンス運動」に含まれます。「レジスタンス=抵抗」です。これは動作に抵抗を加えることで筋肉を刺激しようというもの。たとえば肘をまげるときにはたらく筋肉「上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)」に対してバーベルなどを持つことで、肘を曲げる動作に対して重たいバーベルが抵抗を加えます。これがレジスタンス運動です。この抵抗という刺激が筋肉を成長させることになります。筋肉の成長には絶対に欠かせないと考えられる7つ(あるいは8つ)の原則のひとつです(※注1)。筋肉を発達させるには十分な負荷(重さ)を必要とします。筋肉を成長させるための負荷の刺激は最大筋力の70%のというのが定石となっています。つまり自分がもっている最大限の力を発揮してやっとベンチプレス100kgあげられるのであれば、筋トレは70kgの重さでやらなければ効果は低いということです。これに対してスロートレーニングは最大筋力の30〜50%程度で筋肉の成長・筋力の増強が可能という研究結果を報告する論文もあります。

 

http://www.min-iren.gr.jp/?p=7163 |スロートレーニングでは、負荷の強さが最大筋力の30~50%程度でも、強い負荷で普通のトレーニングをおこなった場合と同様に、筋肉の中の酸素が減少し、代謝産物(筋肉の活動に伴って生成される物質)の濃度、ホルモン分泌などが変化することがわかりました。|

http://www.jwcpe.ac.jp/research/bulletin/bulletin_vol20.pdf |筋発揮張力維持法(low − intensity resist- ance training with slow movement and tonic force generation : 以 下 LST) は 50 % 1RM 程度の比較的軽負荷を用いながらも,持続的な筋発揮張力を維持することで大きな筋 肥大・筋力増強効果を得られるトレーニング 法である.( LST:スロートレーニングと同義)|

 

※注1:トレーニングの原則について

*過負荷の法則:効果を得るには十分な負荷(刺激・重さ)が必要という法則

*漸進性の法則:筋肉の発達に従って徐々に負荷量を上げていくことが必要という法則

*特異性の法則:スポーツでは実践を考えておこなう必要があるという法則。肩や腕の筋肉を筋トレしていていも投球動作を練習しなければ投手としてのパフォーマンス向上は十分な効果が得られないということ(そのためチューブを使い実戦のシーンを考えた取り組みなどがおこなわれています)。

*反復性の法則:筋トレは1回ではダメ。継続することが必要という法則

*全面性の法則:ひとつの部位ばかり鍛えても十分な効果が得られない、とくにスポーツ分野では全体的に鍛えることがパフォーマンス向上につながるという法則

*個別性の法則:体力・筋力は人によってさまざま。自分に合ったトレーニングが必要という法則

*意識性の法則:トレーニングの目的、鍛えている筋肉を意識して取り組むことが必要という法則

*(適時性の法則):述べられている文献もあれば、そうでないものもあります。トレーニングには年齢に応じて適したものを選ばなければいけないという法則。

 


http://www.jwcpe.ac.jp/research/bulletin/bulletin_vol20.pdf 日本女子体育大学付属基礎体力研究所紀要 筋発揮張力維持法(スロートレーニング)の効果とそのメカニズム(p32)
http://www.min-iren.gr.jp/?p=7163 全日本民医連 特集2スロートレーニングで健康づくり 筋肉の力を緩めずゆっくり動くことがポイント

 

 

2. 血流の制限がもたらす肉体変革

 

加圧トレーニングというトレーニング理論があります。これは日本で生まれたトレーニングの考え方で、からだに専用のベルトを装着し血液の流れを制限した状態で筋力トレーニングするというものです。血流をあえて妨げることで筋肉の反応を高めることができるといわれています。筋肉の成長に必要なホルモン分泌を促進し、普段は使われていない筋肉内の細かい血管にまで血流を届けようとする生体の反応が筋肉の発達に大きく貢献するという理論に基づいています。筋肉内の細かい血管にまで血流を届けようとする生体の反応によって筋肉にいき渡る酸素や栄養が向上することになります。また、神経と筋肉のはたらきが改善し、筋トレ効果が高くなることが知られています。スロートレーニングではこれと同様の効果が得られることが確認されています。ゆっくりとしたスローモーションを必要とするトレーニングでは、筋肉の収縮時間が長いため筋肉内の血管が圧迫を受けます。これによって血流の流れは通常よりも妨げられるかたちとなります。つまり筋肉を加圧トレーニングしている状態と同様の環境におくことになるのです。

 


https://ir.lib.osaka-kyoiku.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/25502/1/KJ4_5902_219.pdf 大阪教育大学紀要第IV部門第59巻第2号 加圧トレーニングにおける血中成長ホルモンへの影響
http://www.waseda.jp/sports/supoken/research/2009_1/5009A311.pdf 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科・週 1 回、1 時間の筋力トレーニングと栄養指導で骨 粗鬆症が改善した事例 第2章加圧トレーニング原理と効果

 

 

3. 筋肉の発達に必要な成長ホルモンの分泌を促す

 

トレーニングについてある程度ご存知の方ならば、筋トレと成長ホルモンの関係については聞いたことがあるのではないでしょうか。成長ホルモンは名前からも想像できますが、からだの成長に欠かせないホルモンです。栄養の吸収を促進し、骨や筋肉の成長を促進するはたらきをします。数々の研究によって、成長ホルモンが運動後に増加すること、そして運動のつよさ・時間が増えるほど血液中の成長ホルモンの濃度が高くなることが分かっていることから筋肉の成長と成長ホルモンの関わりが深いと考えられるようになっています。この他にも精巣から分泌されるホルモンやすい臓から分泌されるホルモンも筋肉の成長との関係が考えられていて研究がすすめられています。

 


http://ci.nii.ac.jp/els/110008916645.pdf?id=ART0009874750&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1469244150&cp= 実践女子大学生活科学部紀要第49号・運動による骨格筋の肥大機構の文献的研究 3. どのようにして骨格筋肥大は解明されてきたか? その骨格筋肥大誘導モデルの開発を考える
http://hokuga.hgu.jp/dspace/bitstream/123456789/1593/1/YOSHIDA.pdf 北海学園大学 スロートレーニングを主体とした大学体育授業が大学生の身体組成、体格、および筋力に与える影響
http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2015/01/86-03-10.pdf 生化学・第86巻・第3号 廃用性筋萎縮とアミノ酸

 

4. 一石二鳥!筋トレ+ダイエットへの効果も

 

ダイエットをするとき、過酷な食事制限をしたりすると脂肪だけでなく筋肉の成長に必要なタンパク質なども不足してしまいがちです。筋肉は脂肪よりもネエルギー代謝が大きいので筋肉量が減ってしまうと、かえって太りやすい体質になりダイエット後に過食するとリバウンドなどにつながることになるといわれます。そのため健康なダイエットは、運動量を確保し筋肉は維持もしくは増加させながら余分な体脂肪だけを落としていくのが理想のダイエットと考えられているのです。このような研究があります(※2)。筋肉量によって「筋肉量が高いグループ」、「筋肉量が中間のグループ」、「筋肉量が低いグループ」の3つにわけて、それぞれの基礎代謝量(※3)のちがいをみるというものです。これによると、筋肉量が多いグループの基礎代謝量は約1200kcl〜1300kcl、中間のグループは1190kcl〜1250kcl、低いグループは約1130kcl〜1230kclと報告しています。基礎代謝が一番低い値と高い値を比べると170kclくらいです。これは加糖の缶コーヒー約3〜4本分のカロリーに相当するので結構なカロリー差となります。ちなみに全身の組織の1日あたありのエネルギー消費は、筋肉の370Kcalがもっとも高く、次が肝臓で360Kcal、脳の340Kcalの順で上位を占め、脂肪は70Kcalとわかっていることからも明らかです。

 

※2この研究では女性が対象となっています。

※3基礎代謝量:生命を維持するのに最低限必要とされるエネルギー量のことです。何もしなくても生きているだけで消費するカロリーと考えることができます。

 

そしてスロートレーニングのさらなるダイエット効果を示す研究があります。大学生を対象とした研究で、スロートレーニングを中心にプログラムを作成し、それを週に1回、4ヶ月間実施したところ、背筋運動、腕立て伏せなどの回数はパフォーマンスが向上し、体脂肪率と体脂肪量の減少が確認されたというものです。この研究では有酸素運動の実施、食事の制限といった指導はされていない条件で実施されています。スロートレーニングは優れた筋トレ効果にプラスして、ダイエット効果も期待できるといわれています。

 


https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html 厚生労働省 加齢とエネルギー代謝
https://www.kasei-gakuin.ac.jp/library/kiyou/zenbun/52-3.pdf 東京家政学院大学紀要 第 52 号・体脂肪率による体形判定に関する一考察 結果
http://hokuga.hgu.jp/dspace/bitstream/123456789/1593/1/YOSHIDA.pdf 北海学園大学 スロートレーニングを主体とした大学体育授業が大学生の身体組成、体格、および筋力に与える影響

 

 

5. ケガやからだのトラブルのリスクを軽減

 

スロートレーニングは、通常の筋トレよりも軽い負荷で実施して高い効果が期待できるトレーニングです。負荷が小さくて済むというこは、関節や靭帯といった組織への負担が小さいことを意味します。このトレーニング理論は医療やスポーツからの復帰にともなうリハビリに対しても有益なトレーニングだと考えられるようになりつつあります。高齢の方にもすすめられるということから厚生労働省によっても中高年向けにも効果が期待されるものとされています。

 


https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2012/0/2012_48100271/_pdf 日本理学療法士協会 スロートレーニングによる骨格筋特性の即時変化運動速度および収縮様式によって筋力トレーニング時のメカニカルストレスに違いはあるのか?
http://wildlife.jpn.com/wildlife-consul/ishii/content/research/index.html 東京大学総合文化研究科・石井直方研究室 4 新しいトレーニング法の開発と応用

 

 

スロートレーニング実施のポイント


動作の時間は6〜7秒。回数は10回を目標に

 

スロートレーニングにおいても基本の動作はアップダウンです。腕の筋肉であれば肘を曲げる伸ばす、太ももの筋肉であれば膝を曲げる伸ばすという動作は、一般的な筋トレと大きなちがいはありません。まもりたいのは時間です。目安は「上げるのに3秒」、「ピークの位置(いちばん苦しいポジション)で1秒キープ」、「下げるのに3秒」の計7秒の動作を意識するということです。このうち1秒間のキープは必ずしも必須とはされません。またこれ以上長くやることでも差し支えないといわれますが、まずは「基本は6〜7秒」をまもることからはじめましょう。回数は無理のない範囲で組んでかまいません。まずは4〜6回でトライし、次に10回を目標にします。

 


http://ci.nii.ac.jp/els/110009843996.pdf?id=ART0010358457&type=pdf&lang=en&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1469250522&cp= 理学療法学第41巻第4号 2.スロートレーニング

 

呼吸はとめない。動きに合わせる

 

筋トレなどで頑張るとき、どうしても息を止めてしまいがちです。息を止めておこなうと急激な血圧の上昇などを招く危険性があります。スロートレーニングではある程度時間をかけておこなうトレーニングです。息はうごきに合わせておこうよにして、決して止めないようにします。基本は「力を入れるときに吐く」です。たとえばベンチプレスならバーをさげるときに息を吸い、バーを上げるときに吐きます。

 

関節は曲げ切らず、伸ばし切らず

 

トレーニング中に関節を完全に曲げきってしまうと筋肉の収縮が弱くなります。また完全に伸ばしきると骨と骨で重さをサポートしてしまい、いわゆるロックがかかる状態になります。こうなると筋肉のはたらきは不十分です。腕立てでも完全に肘を伸ばしきると力をそれほど必要としません。それと同じです。中間の位置が筋肉が活動していていて辛いのです。関節は最後まで曲げない、伸ばさないということを忘れないようにします。

 

 

スロートレーニング実践


腹筋を鍛える|クランチ

クランチは腹筋の筋トレの代表的なエクササイズです。基本的なうごきは通常のクランチと変わりません。動作がゆっくりであること、そして動作において完全に上半身をおこしきらない、また上半身を床についてしまわないというポイントをまもるようにします。

 

 

下半身を鍛える|ランジ

ランジは左右の足を前後に構えてしゃがみ動作をくり返すというシンプルなエクササイズですが、太ももとお尻を中心に下半身の主要な筋肉を鍛えることができます。両手を胸にクロスする方法もありますが、上半身のフラつきなどがあるならば、両手は腰の位置に構えておこなうと安定します。またランジは負荷量を増やそうと思えば、両手にダンベルなどの重りを持っておこなうこともできます。

 

 

逆三角形の背中に|ベントオーバーロウイング

ベントオーバーローイングは背中の筋肉を逆三角形にみせる筋肉「広背筋(こうはいきん)」をターゲットに刺激する筋トレです。前傾姿勢になり、両手に持った重りを上下に上げ下げしていく動作をくり返します。背筋が曲がっていると腰を痛めたり、肩や首に不要な負担がかかります。背筋をまっすぐに伸ばすことを意識しておこないます。また、バーベルの重量は重すぎないものからはじめることがおすすめです。重すぎない負荷量を選ぶことでフォームが崩れたり、からだの反動が加わったりすることを防ぐことができます。

 

 

まとめ


スローにするだけ、でも効果は期待感に溢れている

スロートレーニングの魅力とトレーニングの実践方法についてご紹介しました。ゆっくりおこなうことにより、筋肉の収縮時間を維持して高い効果を目指そうとするトレーニグがスロートレーニングです。動作に6〜7秒という時間をまもることを心がければ、既存の筋トレなどに応用することができます。ゆっくりというのがこれほど効果があるということは考えてみると納得できますが、実際に実践されているかといえば、決して多いとはいえません。近年、このスロートレーニングは国内でも研究が盛んです。日本でも東京大学などを筆頭にアカデミック分野でも研究がすすめられています。また海外では、6〜7秒という時間をさらに延長し、14秒という時間をかけておこなう「スーパースロートレーニング」が一定の効果を上げていることもあって注目を集めています。

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