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【モテる男性講座その5】モテる男性のニオイとは?


今回のモテる男講座のメインテーマは、「男性の体臭」。つまりモテる男のニオイについての検証です。体臭と聞くと、あまりよいイメージを抱かない人もいるのではないでしょうか。男性の体臭といえば、「加齢臭」や「汗臭さ」などが連想されがちです。普段の会話のなかで、体臭という言葉を聞くと「男性特有の不快なニオイ」を暗黙の了解で感じ取っているところがあります。セクハラやパワハラといった近年の時事ネタで登場する言葉にちなんでか、スメハラ(スメル・ハラスメント)と表現されることすらあります。

その一方で体臭といえば「フェロモン」という意味で使われることもあります。とくに異性関係の話題となるとき、体臭は気がつけばフェロモンという呼び名に変わって語られることが多いものです。フェロモンという言葉は一般にもよく知られているので、聞いたことがあるという人が大半ではないかと思います。ギリシャ語で「運ぶ」を意味する言葉「pherein(フェレイン)」と内分泌物質の「hormone(ホルモン)」に由来してpheromone(フェロモン)と名付けられたもの。生物において、同じ種の他の個体が刺激を与えて生理的な反応を引きおこすことで知られる物質です。異性に対して性的興奮をおこす物質として語られることも多いです。このフェロモンは、名前だけがひとり歩きしてしまっていて、「フェロモンって何?」と聞かれるとよくわからないことに気づきます。それもそのはず、実はフェロモンについては、詳しいことが解明されていないため、生物学や遺伝科学などの学術分野においても研究が現在進行形で進められているちょっとホットな話題なのです。

そうはいうものの、フェロモンを人間が感じ取るとき、それは嗅覚が中心といわれます。鼻には、ニオイをキャッチする約400種類もの受容体があり、不快なニオイや香水、食べもののフレーバなどの芳香を嗅ぎ分けています。不快なニオイは、緊張状態をおこし、脈拍数の増加、血圧を上昇させることも知られています。逆に好ましいニオイは、呼吸を深くし、緊張をほぐす作用があることも知られています。ニオイは人間にとって生理的反応をおこさせる誘引物質なのです。そこで、フェロモンとしての「ニオイ」が異性を惹きつけるうえで重要な役割をしているのでは?という点では、賛同者も多いのが事実。今回は、さまざまな文献を紐解きながら、モテる男性の「ニオイ」についてみていきたいと思います。

女性が好むニオイ


体臭は遺伝レベルで決まる!?

 

体臭については学術的な研究題材としても注目されているということをご紹介しました。近年は、遺伝の分野がとくに飛躍的な伸びをみせています。医療や農業などのさまざまな分野で、遺伝子の研究が貢献しているのは周知の事実です。この遺伝子レベルでの研究が進展したこともあって、ニオイと人間の生理的なメカニズムも少しずつ解明されつつあります。注目したいのは、MHCという遺伝子です。これは「Major Histocompatibility Complex(主要組織適合遺伝子複合体)」の略で、動物がもっている血統としての身分証明書のようなものといわれています。このMHCは人間の場合、HLA「Human Leukocyte Antigen(ヒト白血球抗原)」とよばれています。もともと1950年代に発見されてから、長く免疫のはたらきに関わるものと考えられていました。しかし今では、ほぼすべての細胞や体液にも存在しているということがわかっています。

「このHLAはいわば人間の血統としての身分証明書のような役割をもつ」。そういわれる意味は主に以下の2つの理由があります。

 

【1】HLAが父親と母親の型を1つずつ受け継いでいるから。

HLAは、両親からそれぞれ受け継いだ2つの型が一対となって1つのセットをつくっています。このHLAのセットの組み合わせはたくさんあり、さまざまなバリエーションがあります。その組み合わせは数万通りともいわれています。このバリエーションの豊かさが、いろいろな外敵からからだを守ったり、自分と自分以外のものを区別する役割をもつというわけです。

 

【2】自分と他者を区別する。

HLAは免疫と関わりが深く、自分とそうでないものを区別して、外敵とみなされるものを攻撃するはたらきがあります。通常、免疫機能は外敵を攻撃しますが、自分自信を攻撃することはありません(一部の病気などを除いて)。自分と他者をきちんと見分けているということです。HLAは、血統としての(両親から受け継ぐ)、身分証明書(自分であることの証)とよばれるのはこのためです。

このHLA、免疫についてのメリットはさることながら、HLAは尿や汗、そしてニオイ(体臭)にも影響していることが報告されるようになっています。HLA自体がニオイ(フェロモン)ということではありませんが、フェロモンの運び屋としての役割をもっていることがわかっています。体内でフェロモンとなる匂い物質を包み込んで、汗などに混ざって体外に放出されるというのです。そのときHLAのなかにある物質も同時に混ざって放出されます。これが「ニオイ」のもとになると考えらえています。HLAのタイプが違えば、なかにある物質のタイプも違うため、人によってニオイが違ってくるということになるのです。HLAとニオイの関係を次項でさらに詳しくみていきます。

 


※HLA Laboratory(http://hla.or.jp/about/hla/
※国立環境研究所・環境リスク研究センター(https://www.nies.go.jp/risk/mei/mei003_5.html
※Wedekind et al. Proc R Soc Lond B Biol Sci. 264: p1471-1479, Body odour preferences in men and women: do they aim for speci¢c MHC combinations or simply heterozygosity?(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1688704/pdf/9364787.pdf

 

 

父親と似たHLAタイプの体臭に女性は安心感を抱く!?

 

米国シカゴ大学の研究チームが報告した研究をご紹介します。この研究では、10代から50代の女性をターゲットとしておこなわれています。まず、男性(人種が違う)数名にそれぞれ二晩同じTシャツを着つづけてもらい、それぞれの男性の体臭をしっかりとつけたあと、女性たちにここにTシャツのニオイを評価してもらうというもの。次に「もっとも好きだ」と評価された男性と「好きではない」と評価された男性のニオイを比較しています。さらに、「もっとも好きだ」と評価されたニオイの男性のHLA遺伝型を調べてみると、高評価した女性の父親とのHLA遺伝子のタイプの一致率が有意に高いということが報告されています。HLA遺伝子とは、HLAのタイプを決めている遺伝子です。HLAのタイプは遺伝子で決まるため、理論上では親から子にニオイの一部が受け継がれるわけです。

 


|Notably, the mechanism for a woman’s ability to discriminate and choose odors is based on HLA alleles inherited from her father but not her mother.|https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11799397?dopt=Abstract&holding=npg

 

 

また、そのHLA遺伝子の一致率が高いほど、「好き」の度合いも高くなるという関係性があることも述べられています。しかし、この論文のなかでは女性が評価する基準が「pleasantness, liking」となっているので、「異性に感じる性的な魅力」となるかどうかは少し疑問があります。どちらかといえば、「心地よさ」や「安心感」という表現が適しているようです。

 


※nature international weekly journal of science・Paternally inherited HLA alleles are associated with women’s choice of male odor(http://www.nature.com/news/2002/020121/full/news020114-13.html#B1
※Jacob et al.:Nature Genetics 30, p175-179, 2002, Paternally inherited HLA alleles are associated with women’s choice of male odor(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11799397?dopt=Abstract&holding=npg

 

 

自分とHLAタイプがかけ離れた体臭に魅力UP!?

 

異性としての性的な魅力などについて、HLAのタイプを交えつつ議論している論文として、英国・学術誌「The Royal Society」に掲載された「Body odour preferences in men and women: do they aim for specific MHC combinations or simply heterozygosity?」というものがあります。HLAのタイプとニオイと異性選択についての研究はこれだけではありませんが、この論文のなかでは、過去のHLAに関するさまざまな研究が豊富に紹介されていて、それを踏まえた上で議論が進められています。ここで注目したいのは、HLAのタイプが「かけ離れている」男性のニオイほど好印象になるというものです。HLAタイプがかけ離れるほどに女性に選択される(つまり魅力的にうつる男性)になる理由として、著者たちは以下の仮説を提唱しています。

 

①『異なるHALタイプの異性との間に生まれたことどもは、HLAのバリエーションが豊かになり、免疫分子の多様性がアップする。』つまり、免疫力をあげて環境につよい子孫が残せるようになるということです。

②『近親相関を防ぐため』近親相関は、子孫に対して解剖学的・生理学的にさまざまなトラブルを招くことが知られています。その防止策になるということです。

 

これらの学説などをみていくと、異性が男性に抱くタイプには以下の2つがあるということがみえてきます。

 

■一緒にいて安心感がある、心地よさを感じる男性→自分の父親とHLAのタイプが近い男性

■一緒にいて性的魅力を感じたり、刺激がある男性→自分の父親とHLAタイプが差異が大きい(遺伝的に遠い)く、自分とも遺伝的にかけ離れている男性

 

HLAがニオイ、つまり体臭と関連しているということを合わせると、第一印象でビビッときてしまうモテ男のタイプは後者のタイプということです。「自分とHLAのタイプが近い男性から出るニオイは不快な体臭と感じられ、逆に自分とかけ離れたHLA遺伝子タイプの男性から出るニオイは、異性としての魅力を感じるフェロモンとして受け取られるという可能性が高い」ということ。ニオイに関するメカニズムはまだまだ未知の部分もありますが、恋愛対象として選ばれる男性が必ずしも結婚相手として選ばれるわけでないことがあるのは、HLA遺伝子が関係しているのかもしれません。これは、HLA遺伝子は「恋愛遺伝子」という別名をもっていることからも、異性関係とHLAには密接な関係が考えられているのです。

 


※Wedekind et al. Proc R Soc Lond B Biol Sci. 264: p1471-1479, Body odour preferences in men and women: do they aim for speci¢c MHC combinations or simply heterozygosity?(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1688704/pdf/9364787.pdf
※シャロン・モアレム(著):人はなぜSEXをするのか?―進化のための遺伝子の最新研究, アスペクト, 2010

 

 

 

女性が嫌うニオイ


不快な体臭のもとになる物質がある

 

ここまで、女性が好まない体臭として感じられるものは、HLAのタイプが近いということがわかりました。人によっては、同じニオイに対して意見が分かれることがあるのは、HLAの違い、つまり遺伝的な要素があるということです。また、それ以外にも不快な体臭となる原因物質があるといわれています。これらは、大手化粧品会社などの研究を中心に解明されつつあります。株式会社マンダムの資料によると、男性に発生する体臭の原因物質が「ジアセチル」という物質であることを世界で初めて解明したと発表しました(2013年)。

このジアセチルは、脂肪分を含んだ汗が体外に出されたときに、皮膚にある細菌に分解されて発生する物質です。このジアセチルに関しては、不快なニオイとして感じられることが多いといわれています。そのため、ジアセチルをターゲットにしたデオドラント剤(体臭などを除去する商品一般のこと)などの開発が進められています。ジアセチルの発生量を年代別にみると、おおむねほとんどの年齢で発生しているとされるものの、とくに30代〜40代で発生量が多く、とくに頭部とそのまわりからの発生が目立つといわれています。頭は確かに生活のなかで隠すのが難しい場所です。ニオイはそのまま不快な体臭として受け取られる可能性が高いです。

ジアセチルのニオイの度合いはつよく、お酢などくらべてみると、1/120の量でもニオイとして受け取られるほど強力なものだといわれています。ジアセチルの発見と肩を並べて、ジアセチルの抑制効果がある植物エキスなども研究が進められています。現在、カンゾウ、ケイヒなど、フラボノイドといった植物エキスにジアセチルの抑制効果があることがわかっているようです。

最近、「枕や襟元のニオイがきつくなってきた」、「友人から体臭を指摘された」ということであれば、これは対策を考えるのがよいでしょう。ちなみに「これもフェロモンの1種では?」とも考えてしまいそうですが、ジアセチルに関しては不快に感じる女性が多く、ある特定の年齢から増加してくるため、フェロモンとして割り切るよりは、ニオイ対策に取り組む方が賢い選択だと言えそうです。男性スキンケア商品を開発しているメーカーが、このジアセチルをターゲットに抑制効果のある商品を開発していることも、それを示す根拠ともいえます。

 

|30~40 歳代のミドル男性 における不快な脂っぽいニオイ「ミドル脂臭」の原因成分が、頭部とその周辺から発生する「ジアセチル」であ ることを、独自の解析手法により世界で初めて明らかにしました。また、ジアセチルは、表皮ブドウ球菌などの 皮膚常在細菌が汗に含まれる「乳酸」を代謝することで発生することを解明するとともに、数種のフラボノイド 含有植物エキスが、皮膚常在細菌の「乳酸代謝」を阻害し、ジアセチルの発生を効果的に抑制することを見出 しました。|

 


※株式会社マンダム・News Release・「マンダム、ミドル男性に発生するニオイ成分を特定」(http://www.mandom.co.jp/release/2013/src/2013111802.pdf#search=%27男性+臭い+論文%27
※株式会社マンダム・男のにおい総研(http://m-age.jp/smell/research/original/01.html

 

 

まとめ


異性は本能的ニオイを感じ取る

どうやら、モテる男のニオイとは、遺伝的により優れた子孫を残したいという「女性の動物的本能」がはたらいているといえそうです。
結論からいえば、HLAのタイプ的にかけ離れている「バッチリ相性がよい」女性、つまり自分のニオイを魅力的フェロモンとして感じてくれる女性を探しつづけることが必要だということです。
今後さらにフェロモンについては、そのメカニズムが解明されるのではないかという期待は学術界でも高まっています。
ただニオイには、環境的なものも関係するといわれますので、100%遺伝子だけに依存することはできません。
例えば、ある食べもののニオイを嗅いで「美味しそう」と感じることもあれば、「くさい」と感じることもあります。ここには遺伝というよりも、むしろ育ってきた環境や文化的な背景が関係していると考えられています。そのため、ニオイに関して遺伝だけで議論することに否定的な意見があるのも事実です。
ですが、「ニオイ・異性選択」という結びつきについては、深い関係があると考える学者が多いのも事実。「恋愛遺伝子 運命の赤い糸を科学する」(2001年、光文社)の著書で知られる山元大介博士は、「相性を判断する要素はたくさんあるけれど、科学的に判断するとなると、今のところこのMHC(HLA)だけだと思う」といった趣旨の内容を述べています。
注意点があるとすればひとつ。ジアセチルに代表されるような「不快な男臭」といわれる物質については、上手にデオドランド剤などを活用することも大切です。不快なニオイは抑えつつ、本来もっている自分らしいニオイ=フェロモンを漂わせて異性の心を魅了するもの、それが「モテる男のニオイ」というものでしょう。ちなみに、シンメトリー性に優れた人は、ニオイも好印象をもたれることが多いということもいわれています。顔や声に引き続き、ここでもシンメトリー性が関係しているようです。

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