モテライフ

【モテる男性講座その8】恋愛と脳科学


前回までは、「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「味覚」、「触覚」といった視点から「モテる男性講座」を進めてきました。今回は、さらにステップアップして、モテる男となるための「学問」としてさらに深掘りしていきます。今回のメインテーマは、「恋愛と脳の関係」です。「脳科学」という学問の領域、とくに脳内をかけめぐる脳内物質という観点から恋愛についてみていきます。

恋愛は脳でするもの!?


脳と心の関係

 

これまで、人間の五感である感覚を中心に「モテる男性講座」をすすめてきました。その感覚は、「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「味覚」、「触覚」などです。いってみれば、恋愛の解剖学ともいえるもの。これは恋愛の基礎講座のようなものです。ここから、「モテる男性講座」は、さらにステップアップして、モテる男となるための「学問」を探求していきます。

その最初のお話が、恋愛と脳の関係です。「脳科学」という学問の領域は、医学、科学、心理学、文学、理工学分野などさまざまな領域で研究されています。この分野は、境界をもたないボーダー・レスの世界観をもっている学問です。近年、脳科学の分野は大きく進歩していて、研究開発は世界中で行われています。「AI:Artificial Intelligence(人工知能)」は、人類が次に注目する産業であるともいわれていますが、このAIとも脳科学の分野は深い関わりがあります。

そして、脳科学の発展にともない、人間の心のはたらきと脳の関係も研究が盛んにおこなわれています。そのなかには、脳=心とまでは言い切れないにしても、それに近い見解をしめす見方もあるほどです。これまで、「モテる男性講座」でも恋愛行動は、身体的な行為であると同時に、心の行為でもあるという内容に触れてきました。心の活動は脳の活動である(あるいは、その要素がつよい)というのであれば、恋愛と脳科学にも深い関係があると考えられます。

たとえば、人間にとって糖分、脂肪分、塩分などは「必要なもの」でもありますが、同時に「美味しいと感じるもの」という見方もできます。これは、脳が糖分、脂肪分、塩分といった栄養分摂取を求めていて、食べることによって「心地いい」と感じているからです。逆に不快な味やニオイからは逃避したくなります。これも脳が不快だと感じている状態で、脳はその状態を遠ざけるために逃避行動をするよう指令を出すからです。また、「生理的に合わない人」とか、「あの人とは気が合わない」など直感的な表現で、特定の人に嫌悪感をあらわすような言葉を聞くことがありますが、ここにもやはり脳が不快だと感じているのだといいます。

このように脳=心ではないにしても、心と脳は深い関係があります。それならば、恋愛も脳科学の分野からみていくと、優れた発見がみえてきそうです。恋愛活動での脳活動を知ることで、自分の脳でおこっていること、相手の脳でおこっていることを冷静に分析できる視点を身につけることができれば、恋愛を成就させる確率が高くなるかもしれません。

 

恋愛と関わるとされる3つの脳内物質

 

恋愛と脳の関係について調べていくと、国内外でもたくさんの研究報告があることがわかります。また関連する書籍も意外に多く存在しています。そしていくつか共通した脳内物質が紹介されています。これらは、ひとつの報告のなかで、すべての物質についてふれているものもあれば、特定のひとつだけについて触れているものもあります。では恋愛に関わる脳内物質は何かというと、主には以下の3つにフォーカスできます。

 

■ドーパミン

■セロトニン

■フェニルエチルアミン

 

ここからは、これらの物質がどんなものなのかということについてご紹介していきます。ただ、あくまで「モテる男性講座」の視点からのご紹介です。詳しい作用や科学的なないようについては、深く追求するわけではなく、恋愛という視点から気軽に触れることができる科学というムードですすめていきます。

 

 

ドーパミン

 

ドーパミンという物質は、とても多様な作用をもっている物質で、からだのなかではひとつの神経からもうひとつの神経へと情報を伝達する「神経伝達物質」としての役割をもっているものです。そしてこのドーパミンという物質は、脳のなかで情報をつたえる役割があることで注目されています。以前から運動の調節をおこなうはたらきがあることがわかっていて、ドーパミンの過不足がおこることで健康被害が生じたり、特定の病気と深く関わりがあるといったことも知られていました。このドーパミンは、心理学などの分野で注目されるもうひとつのはたらきがあります。それは、「脳内報酬系」というシステムの中心的な役割をもっているということです。

脳内報酬系というのは、簡単にいえばある神経同士が結びつきをつくってできる回路のことで、報酬という名前があらわすように「ある欲求が満たされたとき、または満たされることがわかったときに活性化して、個体に快感の感覚を与える神経ネットワーク」のことです。つまり脳が「心地よい」と感じたときにはたらくのが脳内報酬系というわけです。そしてここで主要なはたらきを担うのがドーパミンだといわれます。

恋愛は、快楽をともなう一連の行動です。であるならば、恋愛にも脳内報酬系という脳のシステムがはたらいていることがわかってきています。美味しいものを食べたり、好きなことにチャレンジしているときに、このドーパミンという物質が脳内で分泌されるのと同じように、好きな人や行為を抱いている人をみるとドーパミンという物質が増えることがわかっています。

最近の研究報告で有名なものは、理化学研究所・大阪市立大学・ロンドン大学の共同研究による「熱愛中にドーパミン神経が活性化する脳領域を解明-恋人を見てドキドキすると、前頭葉の2つの領域が活性化する-(http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150514_1/)」があります。この研究では20代の男女を対象に、恋人の写真と同性の友人の写真をみたとき、脳のなかで分泌されるドーパミンの放出の程度に違いがあるかを医学的な検査機器を使って研究しています。結果は、恋人の写真をみているときの方が顕著にドーパミンが放出されていることがわかったとしています。

ちなみにこのドーパミンは、新しい刺激ほど活性化されるともいわれています。つまり、恋愛についていえば、新鮮な恋ほどドーパミンが多いということがいえそうです。いってみれば、ドーパミンにはギャンブル的要素があるということです。相手に対してサプライズ、オンとオフのギャップを感じさせる、といった「新鮮さ」を与えることで、ドーパミンの放出を高めることが期待できます。

 

 


*枝川義邦・渡邉丈夫:行動・学習・疾患の神経基盤とドパミンの役割, 早稲田大学高等研究所紀要第2号, p75~92(https://www.waseda.jp/wias/eng/achievement/bulletin/data/y_edagawa_2009.pdf
*Bianca P. Acevedo(Weill Cornell Medical College)・Arthur P. Aron(State University of New York, Stony Brook ):Romantic Love, Pair-bonding, and the Dopaminergic Reward System(http://portal.idc.ac.il/en/symposium/hspsp/2012/documents/cacevedo12.pdf
* Helen Fisher:人はなぜ恋に落ちるのか?―恋と愛情と性欲の脳科学, ソニーマガジンズ, 2005

 

 

セロトニン

 

セロトニンは、こころの病気と深く関わりがあることで知られている脳内物質のひとつです。こころの病気のひとつに「うつ病」といわれるものがありますが、ここにもセロトニンが関わっているといわれ、うつ病の治療薬には脳内のセロトニンを調整する作用をもった薬もあります。

セロトニンは、通称「幸せホルモン」ともいわれていて、かなり一般的にも知られるようになってきています。セロトニンが、「幸せホルモン」といわれるのは、「癒し」や「安心感」、「憩い」といった感覚をもたらしてくれる物質で、このセロトニンの分泌が減ると気分が滅入ってしまったり、ストレスをつよく感じる傾向がつよくなるのだといわれています。

よく「恋は盲目」ということがいわれます。恋をしてしまったり、ストライクゾーンを貫く異性に出会ったとき、その人のことを考えずにはいられず、ときに暴走したり、恋愛がきっかけで極端に気分が不安定になってほかのことが考えられなくなるという状態です。セロトニンは、恋愛において「快楽」を求めて興奮するドーパミンの作用に反して、衝動的な欲求や興奮を抑えるはたらきがあると考えられています。極端な言い方をすれば、一時的で新鮮な恋愛を求めるとき、そこにはドーパミンが主要なはたらきをしていて、安定感や安心感、そして長期的な関係を築くときにはセロトニンが重要なはたらきをしているということになります。たとえば、アメリカの生物人類学者であるHelen Fisher博士は、「人間の魅力(交配相手の注目を引く意味での魅力)は、高いドパミンの活動と低いセロトニンの活動が脳内で作用している」という主旨を述べています。

 

|THE ATTRACTION SYSTEM(in humans termed “passionate love,” “obsessive love,” or “infatuation”) is characterized by increased energy and the focusing of attention on a preferred mating partner. In humans, attraction is also associated with feelings of exhilaration, intrusive thinking about the beloved, and the craving for emotional union. Attraction, I hypothesize, is associated in the brain primarily with high levels of the neurotransmitters dopamine and norepinephrine and with low levels of serotonin. |

 

では、恋愛でセロトニンを増やすにはどうすればよいのでしょうか。セロトニンは癒しのホルモンといわれていることから、心が安らぐような行為で高まるといわれます。会話や表情、デートコースも落ち着いたカフェやレストランを選ぶ、ときには都会の喧騒から離れて公園や海で過ごすなどのシチュエーションを考えることで、相手に対して安心感を感じてもらえる配慮を心がけます。長続きする恋を望むのであれば、セロトニンの分泌はキーワードになるといえます。

 

 


* Helen Fisher:Brains Do It: Lust, Attraction, and Attachment
http://www.dana.org/Cerebrum/Default.aspx?id=39351
*北海道大学・脳科学研究戦略推進プログラム「セロトニンと不安の関係解明に前進」(https://www.hokudai.ac.jp/news/140521_pr_med.pdf

 

 

フェニルエチルアミン

 

フェニルエチルアミンとは、通称「PEA」とよばれるもので、やはり脳内神経物質として知られています。最近では、このPEAと恋愛との関わりに注目した記事などもたくさんでています。PEAにつては、からだのなかでどんなはたらきをしているのか、詳しくはわかっていないといわれていますが、精神機能と関わりがあることがわかっていて、精神治療薬などにも用いられています。

このPEAは、恋愛に関わる記事や書籍のなかで紹介されるとき、「脳内麻薬」や「脳内の惚れ薬」、「天然の惚れ薬」といったフレーズで取り上げられています。このPEAは、神経から神経へと情報を伝達する物質というよりは、どちらかといえば、神経の調節をするはたらきがある物質だといわれています。そして、このPEAにはドーパミンの作用を増強するはたらきがあると考えられているのです。ドーパミンは、積極的な「好き」の場面で放出される脳内物質です。そのはたらきをさらに増強させることから、「脳内麻薬」や「脳内の惚れ薬」、「天然の惚れ薬」とよばれているというわけです。

このドーパミン放出物質であるPEAは、恋愛時期のめまぐるしいときに多く分泌されていて、身体的にも感情的にも多くの興奮がもたらされるといいます。PEAにより、恋の錯覚状態がおこるともいわれています。恋愛と錯覚は、ときに表裏一体です。これを示す実験で有名なものに、ブリテッシュコロンビア大学のダットン博士たちがおこなった「吊橋の実験(1974年)」がよく紹介されます。実験内容は、「吊橋の真んなかに実験者が立ち、自分の電話番号と名前を書いた紙を渡すというものです。揺れる吊り橋と、揺れないコンクリートの橋でおこなった結果、揺れる吊橋の場合の方が後から電話をかけてくる人が多い」というものです。実験の解釈については、議論があるようですが、揺れる吊橋のうえにいるという恐怖体験や興奮体験が、それを恋と錯覚したというものです。これが正しいかそうでないかの議論はしませんが、映画などで、凄まじいアクションシーンをくぐり抜けたカップルがいつの間にか恋に落ちているというのは定番のエンドシーンです。

たとえばデートでジェットコースターやお化け屋敷といった恐怖や興奮を体感する場所がいいといわれたりするのは、PEAのはたらきを無意識に利用しているのかもしれません。また、チョコレートやチーズ、ソーセージなどを含むいくつかの食品にも含まれていることがわかっています。チーズやソーセージはともかく、好きな人に思いを伝えるチョコレートというのも、これはPEAとの関わりを無視するわけにはいかなそうです。

ちなみに、恋愛についていえば、恋愛が実るか実らないかの駆け引き段階のようなときに、興奮作用がつよいといわれます。恋愛のテクニックでいわれる、「最初はガンガン押して、ある程度のところでちょっと引く」というのは、このPEAの作用を狙ったものとして効果が期待できそうです。

 

 


*DONALD G. DUTTON et all:SOME EVIDENCE FOR HEIGHTENED SEXUAL
ATTRACTION UNDER CONDITIONS OF HIGH ANXIETY, Journal of Personality and Social Psychology · November 1974(https://www.researchgate.net/profile/Donald_Dutton/publication/18709788_Some_Evidence_for_Heightened_Sexual_Attraction_under_Conditions_of_High_Anxiety/links/00b7d5232780cc7ca5000000.pdf
*科学研究費助成事業データベース(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570976/
*Chemistry of Love:Tomask State University(http://asdn.net/asdn/chemistry/chemistry_of_love.php

 

 

まとめ


恋愛と脳科学を横割りに探求してきました。恋愛にまつわる脳内物質はこのほかにもエピネフリンといった物質なども関係があるといわれています。刺激や興奮作用を生じさせるドーパミンやPEA、そして継続した恋愛を期待させるセロトニン。脳科学という分野のなかでも、とくに脳内物質に注目して恋愛をみてみました。恋愛と脳は意外にも深い関わりがあり、今後の研究がさらに楽しみです。

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