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【筋肉痛と超回復を考える】筋トレ後の超回復はウソ?本当?|筋トレ計画の参考資料|保存版


筋トレは実施日・休息日が1つのサイクルです。

筋トレの頻度は筋トレの成果に影響します。

 

注意すべきはトレーニングの頻度が多ければよいのではなく、筋肉には休息も必要です。

 

実施日・休息日のサイクルを計画するとき、基準になるのが筋肉痛の回復です。

 

そして、筋トレの回復には筋力がもとのレベル以上に回復する超回復に合わせると筋トレ効果が高いといわれます。筋肉痛・超回復のメカニズムを解説しながら、筋トレのプラン二ングについてご紹介します。

トレーニング後におこる超回復とは?


超回復のメカニズムと考え方

超回復とは「筋力トレーニング(筋肉痛)の後に一定の休息時間を取ると、一時的にパフォーマンスが向上する」という現象です。超回復がおこるのに必要な休息時間は約24〜72時間といわれています。

 

トレーニング後に一時的にパフォーマンスが向上する「超回復」のメカニズムはどういうものでしょうか。

 

筋トレをすると筋肉の繊維がダメージをうけます。ハードな運動をしたあとに筋肉痛がおこるのは筋肉の繊維が傷ついているからです。

筋肉痛から筋肉が回復するとき筋トレ前と同じレベルに戻るのではなく「筋肉がもとの状態以上に回復するのが超回復です。そして超回復は長く続くのではなく、一時的なものだといわれます。

 

 

超回復は筋肉に強い刺激が加わり、反動で一時的に大きな回復をすることです。

 

そして、超回復がおこるのは筋トレのあとに「筋肉がもとの状態以上にリバウンドして回復する」という理論に基づいています。

 

超回復の理論に従えばトレーニング後は「単に疲労が回復するのではなく、一定の間ですが身体がリバウンド的な回復をみせる期間がある」ということです。

 

そして、超回復の期間はいつまでも続かず、再び、元の筋力レベルになると考えます。

筋トレでいえば超回復のときに「通常の自分のレベルを超えた重量が持ち上がる」、走行競技でいえば「タイムが伸びる」といった現象がおこる。これが超回復です。

超回復の時期にパフォーマンスが向上するのは「トレーニングの前より筋力を発揮できる状態にある」というわけです。

これが科学的に正しいかどうかは別にしても、パフォーマンスの向上が経験上確かめられています。

 

筋トレでも超回復の時期にトレーニング日を合わせて筋トレの効果をあげ、効率よくトレーニングの成果をだすことを期待しています。

 


参照
※北川薫(編)「健康・スポーツ科学テキスト 機能解剖・バイオメカニクス」文光堂, 2011
※法人日本トレーニング指導者協会「トレーニング指導者テキスト 実践編 改訂版」大修館書店, 2014
※Hoffman. J. R. 著「スポーツ生理学からみたスポーツトレーニング」大修館書店,2011

 

 

超回復は賛否わかれる理論

 

トレーニングやスポーツの分野だけでなく「超回復」は一般の筋トレでも通説となっています。超回復にあわせて筋トレのプラン立てをする人もいます。

 

筋トレの分野でも超回復は当然の理論とされる傾向があり、トレーニング関連の書籍やインターネット上にも超回復に関する情報がたくさんあります。

 

筋トレは「筋トレ日→休息日→筋トレ日」のサイクルのくり返しで筋肉が発達するため、筋トレと休息は1セットで考えられます。

 

筋トレ後の休息の必要性ついての異論はほぼありません。

 

しかし、超回復は正しい考え方なのかについては賛否分かれていて、超回復について信ぴょう性を疑うという人もいます。

 

ウイダーinゼリーなどの「ウイダー」ブランドを手がける森永製菓のトレーニング用語辞典によると、超回復は「ハードなトレーニングを続けたあと、十分な栄養と休養をとるとトレーニング開始時以上の能力レベルになることがあり、これを超回復と呼びます」と記載があります(注1)。

 

その一方で超回復はスポーツ分野で重要といわれながら科学的なデータが乏しく「確かな裏付けがない」(注2)とする論文もあります。

 

超回復についてはトレーニングのなかで当然の原則のように捉えられる場合もありますが、超回復の信ぴょう性には疑問があったり否定的な意見も事実あります。

 

超回復について賛否がわかれる理由のひとつは科学的な根拠がはっきりしないからです。超回復は経験のうえで語られるケースもあり、科学的な根拠に乏しいと指摘されています。

 


参照
※注1:栗山節郎(監)「トレーニング用語辞典」森永製菓株式会社健康事業部, p203, 1990
※注2:尾県貢「超回復の原理とトレーニングへの応用(特集 スポーツ疲労)」体育の科学52(3), p186~190, 2002

 

 

トレーニングでは科学性が重視される

 

もちろん経験は実践的なものなので貴重なデータです。

しかし、トレーニングは科学的根拠が重視される傾向があります。

 

トレーニングは精神論が重視された時代もあって「日々ハードにトレーニングすれば強くなる」「練習中に水を飲むのはよわさ」「休息はサボりだ」といったメンタル面が強調されていました。

 

しかし、現在のトレーニングは科学性が求められます。科学的な検証が不十分だと効果がありそうなトレーニング理論も普及しづらいものです。次章から筋トレと超回復の関係を詳しくみていきます。

 

 

筋力アップと筋肉痛のメカニズム


筋力アップには「神経系」と「筋線維」の2つに変化が身体におこる

 

超回復についてみる前に筋肉痛と筋力アップのメカニズムについて簡単にみておきます。

 

筋力がアップするとき身体には「神経系」と「筋線維」の2つの組織に対して変化がおこります。

 

筋肉は細い繊維が集まった束です。

そして、筋肉の活動には神経からの命令が必要です。神経が筋肉に対して「収縮しなさい」と指令を送ると筋肉が活動します。

 

1つの神経はいくつかの筋繊維にまとめて信号を送ります。

1つの神経と複数の筋繊維で1つのチームをつくって共同作業しています。

 

筋肉が収縮するとき必ず全部の筋繊維がはたらくのではなく、神経が信号を送っても活動しないで眠っている筋繊維があります。

筋トレで刺激を加えつづけると神経の信号に対して反応する筋繊維の数が増えます。トレーニングの刺激は活動する筋肉の繊維の数を増やします。

また、筋トレに対する負荷に応じて筋繊維そのものも太くなります。

例えば、10kgの重りを使ってトレーニングし続けると、それに対応できるように筋肉の繊維を太くする変化がおこります。筋力がアップするとき身体には神経系と筋線維の2つの変化がおこっています。

 


参照

※丸山仁司「理学療法科学シリーズ 臨床運動学 第5版」アイペック, 2009

※市橋則明「筋力トレーニングの基礎知識-筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズム-」京都大学医療技術短期大学部紀要 別冊 健康人間学9, p33~39, 1997


 

 

筋肉が肥大するメカニズム

 

筋トレで筋肉が肥大する(太くなる)ことは経験的にもわかります。

 

ここで筋肉の肥大がおこるメカニズムについてみておきます。

 

筋肉の繊維のまわりには「筋衛生細胞」という細胞があります。

筋衛生細胞は筋肉の細胞になる可能性はあるけれど、あえてそうせずに眠っている細胞です。

 

筋トレすると筋衛生細胞が刺激されて眠りから覚めた筋衛星細胞が活動的に増えはじめて、筋繊維と結びついて筋繊維を太くします。

 

 

しかし、細胞が分裂できる回数は制限があり、約50回といわれています。

筋衛星細胞の増殖にも限りがあります。

そこで、筋衛生細胞は活発化した細胞の一部を再び眠らせて筋衛星細胞の数をキープしています。

筋衛星細胞は枯渇することなく体内に存在しているので、次の筋肥大の機会を待っています。

 

筋トレし続けたからといって筋肉の成長が望めなくなることはないので、安心してトレーニングを継続していいというわけです。

 


参照
※丸山仁司「理学療法科学シリーズ 臨床運動学 第5版」アイペック, 2009
※北浦孝「筋肥大発生のメカニズム」体力科学40(2), p258, 1991
※市橋則明「筋力トレーニングの基礎知識-筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズム-」京都大学医療技術短期大学部紀要 別冊 健康人間学9, p33~39, 1997
※Andrew Troy・Adam B Cadwallader・Yuri Fedorov・Kristina Tyner・Kathleen Kelly Tanaka・Bradley B Olwin「Coordination of Satellite Cell Activation and Self-Renewal by Par-Complex-Dependent Asymmetric Activation of p38α/β MAPK」Cell Stem Cell vol11, p541~553, 2012

 

 

筋肉痛=筋発達とはいえない

 

筋トレで成果をだすためには「筋肉痛がおこる負荷量が必要」という考え方があります。

筋力アップは筋トレの強度と関係があるので、筋力アップのためには身体レベルに応じた「追い込み型」のトレーニングが必要です。

 

しかし、筋肉痛がなくても筋トレの成果はえられます。筋肉痛についての詳細なメカニズムは研究途上。詳細は未解明です。

筋繊維の損傷や乳酸などの老廃物の蓄積が筋肉痛の原因といわれていますが、筋繊維が損傷したときにみられる体内物質と痛みを感じる日数がズレているとも指摘されています。

筋肉痛の原因は「筋繊維の損傷」や「疲労物質(乳酸など)」ではなく、トレーニングによって筋肉が損傷して炎症をおこすからだと考えられています。筋繊維が炎症しているときに体内で活動する炎症物質が痛みをおこすというのが有力です。

 


参照
※川岡臣昭・小野寺昇・詫間晋平「遅発性筋肉痛および運動に伴う 筋損傷研究における文献的知見-被験者特性の違いに着目して-」川崎医療福祉学会誌Vol.16, No.2, p365~372, 2006
※永富良一「特集 COPDの身体活動性をめぐるサイエンス Topics6 ミオカインと骨格筋のバイオロジー」呼吸器学会誌4(1), p41~46, 2015

 

 

筋肉痛のときは休息するのが◎

 

筋肉痛と筋トレの付き合い方はどうすればよいのでしょうか。

 

結論は「筋肉痛があるのであれば無理をせずに痛みが回復するのを待つ」のが得策といえます。

 

筋肉痛のメカニズムは未解明なところもありますが、トレーニング=筋繊維がおこるのは事実。

痛みがあるとパフォーマンスは落ちてしまいます。

 

筋肉痛があると最大筋力(その人が発揮できる最大の筋力)が発揮できないとする研究報告(注1)があります。

論文のなかでは「トレーニング前とトレーニング後2日・7日後の筋力を調べたところ、運動の2日後も7日後も最大筋力は低下した」とされ、そして運動2日後の方が筋力がより低下しています。

さらに筋肉が傷ついた状態で運動すると筋肉の回復を遅らせるだけでなく、筋肉の成長も遅くなる可能性があるといわれています(注2・注3・注4)。

 

筋肉痛があるのであれば無理をせずに痛みが回復するのを待ちます。「筋肉痛があるか・ないか」は筋トレ実施日・休息日の目安として活用できます。

 

筋肉痛は筋肉の成長のために絶対に必要ではなく、普段の生活で頻繁に使う筋肉であったり運動に慣れてくると筋肉痛になりにくいもの。筋肉がそれだけ成長した証といえます。次回から負荷を少し増やしてみましょう。

 


参照
※注1:堀田典生・山本薫・前野信久・石田浩司「伸張性収縮運動後における筋機能と筋の状態や形態との関係」東海保健体育科学Vol.31, p41~48,2009
※注2:石道峰典・平野朋枝・西沢富江・春日規克「協働筋切除に伴う過負荷が再生時骨格筋の機能的形態的特性に及ぼす影響.」体力科学Vol.52(3), p241~248, 2003
※注3:春日規克・西沢富江・辻本尚弥・鈴木英樹「骨格筋再生時の運動負荷と神経筋接合部の変化」久留米大健康・スポーツ科学センター研究紀要第21巻1号, p1~7, 2014
※注4:春日規克・西沢富江・鈴木英樹「筋再生時の神経筋結合部の変化 その2」体力科學44(6), 640, 1995

超回復の信憑性について


超回復はアスリートにも応用される理論

 

結局のところ超回復の信ぴょう性はどうなのでしょうか。

 

学術的には賛否がわかれる理論ですが、トレーニング経験者やアスリートに応用されている事実と実績をみる限り「超回復」は的を得た理論ともいえそうです。

 

競技レベルの高いアスリートの多くが大会前になると「ピーキング」あるいは「テーパリング」といわれる身体の調整に取り組みます。

 

ピーキングやテーパリングの目的は試合にベストコンディションで臨めるように身体を調整することです。具体的には少しずつ練習・トレーニング量や頻度を変えていきます。

 

ピーキングやテーパリングは超回復の理論に基づいて実践されています。

自分の過去の競技データ推移から「これくらいのトレーニングをすると、疲労の回復に〇〇時間がかかった」といった記録をもとに、身体の疲労と回復に費やす時間を正確に判断します。

そして、レース前には完全に回復をさせておけるようにトレーニングの量や強度を調整していきます。

試合のときに身体を完全回復させ高い能力を発揮しやすい状態にします。つまり超回復を狙っています。

 

超回復はトップレベルのアスリートが応用しているトレーニング理論のひとつです。

 


参照
※大堀孝・鈴木省三「陸上競技ジュニア選手を対象としたピーキングに関する研究」仙台大学大学院スポーツ科学研究科研究論文集4, p79~88, 2003

 

 

超回復は科学的な検証から生まれた考え方

 

超回復という考え方は1961年に「ソ連スポーツ・トレーニングの理論と方法」という著書にはじまるとされます。

 

著者がトレーニングと疲労にまつわる多くの研究に取り組み、その成果をまとめた報告書です。

本のなかでトレーニング後の回復・超回復の過程についてグラフを使った解説があります。現在の超回復とほぼ同じ内容です。

 

また、超回復はカナダの生理学者ハンス・セリエによるとする見解もあります。

ストレッサーに対する生体の全身適応反応として「汎適応症候群」というものを紹介しています。

ハンス・セリエは身体にストレスが加わった直後に外部に対する抵抗力が低下し、その後で抵抗力が高まる抗ショック期があるとしています。

抗ショック期には交感神経系の活動が活発になり、覚醒・活動水準が高くなり、ときに過覚醒や過活動になることもあるといいます。

この考え方が超回復理論のもとになったともいわれています。

 

超回復の理論には科学的根拠が乏しいとする見解も一部にはありますが、一定の科学的な研究の成果から生まれてきた考えです。

 


参照
※H.H.ヤコフレフ, A.B.コロブコフ, C.B.ヤナニス「ソ連スポーツ・トレーニングの理論と方法―その生理学的・生化学的原理」不昧堂書店, 1961年
※ハンス・セリエ「生命とストレス―超分子生物学のための事例」工作舎, 1997

 

 

まとめ


筋トレと深く関係する筋肉痛と超回復についてご紹介でした。

今回の内容をまとめると「超回復はトレーニング後に一時的に一定のレベルを超えて筋力が回復する」という点については科学的な根拠があるとは断言できません。

筋トレ後に48時間~72時間の休息により大幅にパフォーマンスがあがると感じることについては個人差があります。超回復を実感できる人・そうでない人がいるのも事実です。


しかし、筋肉痛があるとパフォーマンスが低下して思わぬケガにつながる可能性があります。
筋トレによって筋肉が損傷した状態でのトレーニングは非効率です。一定の休息は超回復によらず必要です。身体の回復に合わせて筋トレするのは「筋肉の成長」の面からも正論です。

一般的な筋トレ頻度を考えるうえでは超回復を厳密に設定するより、筋肉痛のある・なしでトレーニングのプラン立てをする方が設定しやすいでしょう。
慣れないうちは筋肉痛の回復がおそく、計画どおりに筋トレできないかもしれません。それは継続の問題です。トレーニングに慣れてくれば計画した頻度でプランが進むようになります。


トレーニングの頻度の目安は週あたり3日程度が目標です。痛みがある間は休息日を調整しながら、週に3日は筋トレするのを目標にしましょう。

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